第32回日本ナイル・エチオピア学会学術大会・シンポジウム
日時 2023年4月15日(土) 14:00~17:30ごろまで
会場 大阪公立大学中百舌鳥キャンパス 学術交流会館
方法 対面とオンラインのハイブリッド
共催:大阪公立大学女性学研究センター
「戦争と女性」が議論の俎上にあがる際、主に取り上げられてきたのは「戦争の犠牲者・被害者」となった女性、また「銃後の女性」として戦場から隔離された場所で戦争支援にかかわる女性であった。他方で女性は兵士として、世界各地における国家間の戦争や一国内で発生した内戦に動員されたり、志願し参加してきた。女性兵士動員の背景には、総力戦にむけた兵力の増強もあるが、他方で兵士に志願した女性たちの動機の中にはジェンダーにかかわらず戦時下での国家や社会への貢献や女性の地位向上も指摘される。戦場における女性兵士の経験を明らかにすることは戦争の理解を深めるのみならず、女性の政治的エージェンシーを浮き彫りにする。
他方で、女性が「平和の象徴」と位置づけられたために、あるいは女性の戦争における貢献が家父長制の影響を受けて過小評価されたために、女性兵士の存在や経験が不可視化される場合も少なくない。戦後における男性兵士と女性兵士の経験は必ずしも同じではなく、女性兵士の評価には社会や国家におけるジェンダー規範が深く影響してくる。
女性たちは、どのような経緯で戦争に加わり、そこで何を期待され、何を考えてきたのだろうか。
本シンポジウムでは、ソ連・ウクライナ、ルワンダ、エチオピアの女性兵士を取り上げる。女性兵士が参加した戦争、参加した時期、参加の在り方も千差万別である。多数の女性兵士の動員を第二次大戦下に世界で初めて実現したソ連、ロシアによる侵攻の危機から女性兵士が注目されたウクライナ、冷戦下の軍事政権による圧政に抵抗したゲリラ組織に女性兵士が参加したエチオピア、ジェノサイド後の女性の躍進が注目され女性の軍事化と紛争現場への女性兵の派兵が進むルワンダ。このように本シンポジウムで取り上げる女性兵士がかかわった戦争の性格は多様であり、女性兵士の在り方やその意義は、それぞれの戦争とその社会的背景を考慮したうえで解釈される必要がある。それぞれの戦争における女性兵士の経験は決して均質化することはできず、多様な女性兵士の経験を検討することで女性と戦争に関する理解を深める契機となる。 女性兵士の経験は、戦場の経験に限定されず、戦後の女性兵士の経験との連続性や断絶も注目すべき点である。女性兵士たちが志願した戦争においては、女性兵士の活躍が戦時下や戦後の女性の地位やジェンダー規範に影響を及ぼした事例もある。これらの女性兵士たちの経験、女性兵士が直面した課題と成果、女性兵士を取り巻く戦中や戦後の社会や国家、軍隊の在り方を検討し、女性が兵士として戦争に参加することの意味を考察したい。
プログラム(時間・発表タイトルは若干変更になることもあります)
14:00 開会
14:10~14:20
内藤葉子 大阪公立大学 「趣旨説明」
14:20~15:00
橋本信子 大阪経済大学 「女性が兵士になるとき—ソ連、ウクライナの事例」
15:00~15:40
眞城百華 上智大学 「エチオピア・ティグライにおける女性兵士の経験 —戦時下の女性解放と戦後への架橋」
15:40~15:50 休憩
15:50~16:30
近藤有希子 京都大学 「彼女たちの戦線―ルワンダ丘陵をめぐる危機的日常と女性兵士という選択」
16:30~16:40
秋林こずえ 同志社大学 「コメント」
16:40~17:00 休憩
17:00~17:30 質疑応答