公開シンポジウム

津軽とエチオピア、飢餓の経験—時空を越えてつながる地域—

【趣 旨】
エチオピア=飢饉。みなさんは、こんなイメージを持っていませんか。欧米の歌手によるチャリティー活動のインパクトもあって、私たちはこのイメージを強く印象づけられました。しかし、今やこのイメージは間違っています。
エチオピアは穀物の輸入をすすめたり、干ばつがおきている地域に食糧をとどけたり、干ばつがおきやすい地域の農民をより安全な地域に移住させたり、収入を安定させる開発をすすめたりすることで飢餓のリスクを克服しつつあるのです。
けれども、こうした開発や政策を進めているのは国際機関や国家などの、いわば「外部」の機関です。では、飢餓や飢饉に直面している当事者たちは、援助を待っているだけで何もしてこなかったのでしょうか。そんなことはありません。このシンポジウムでは地方(ローカル)に焦点をあて、当事者たちのいわば「内部」の視点から飢餓を克服する方策について考えます。
とくに参考にしたいのは津軽の飢饉の経験です。江戸時代、津軽の人びとは飢饉とたたかうため、山林を活用するユニークな戦術を生みだしました。このようにローカルに焦点をあてることで、私たちは困難にたちむかう色々な方法を生みだすことができます。それはまた、現代の津軽がかかえる困難を克服するための第一歩でもあると思うのです。

(曽我亨/弘前大学)

シンポジウムの演者紹介
藤田弘夫(慶應義塾大学)
豊富な話題が魅力の社会学者。「なぜ農村は飢えても都市は飢えないのか。」こんなユニークな視点から、飢饉がおきる原因を描きだしてくださいます。食糧を生産しない都市がなぜ飢えないのかわかりますか。
関根達人(弘前大学)
遺跡から出土した、物(モノ)から過去をよみとることに情熱をかける先史・歴史考古学者。津軽一円に分布する供養塔を分析することで、津軽の飢饉についてのイメージを一新してくださいます。
長谷川成一(弘前大学)
多彩な文献史料から過去をよみがえらせる歴史学者。津軽を飢饉が襲ったとき、弘前藩が農民にたいしてとった救済策は意外にも山を利用するものでした。果たしてその効果はあったのでしょうか。
眞城百華(津田塾大学)
口頭史料を駆使する歴史学者。多民族国家エチオピアでは、中央政府と地方がいつも良好な関係を築いていたわけではありませんでした。どんなとき飢饉がおきていたのでしょうか。
藤本武(人間環境大学)
アタックザックひとつで苛酷なフィールドに身軽にでかける文化人類学者。生業が破綻するとき飢饉がおとずれます。エチオピアの農耕民はどのようにして生業の破綻を防ごうとしてきたのでしょうか。智恵と工夫にせまります。